10 人規模のスタートアップがオンライン・コミュニケーション手段を HipChat から Slack に変えた話です。移行を考えている人たちの参考になればと思います。
特に困っていなかった
まずは昔話から。3人で会社を創業したてのころは Google Hangouts でコミュニケーションを取っていました。強い理由はなく、なんとなくです。エンジニアが増えたことを機に HipChat を導入しました。GitHub の通知、デプロイメント、各種ツールからの通知を一元的に閲覧・共有するためです。そこから人も増え、会社のオペレーションやエンジニアリングは順調に回り続けました。製品アプリケーションの状態をスタッフにリアルタイムで知らせてくれる仕組みを作るなど、まさに「いい感じ」でした。
きっかけ
Slack 導入の話が浮上したのは、新しく入社してくれることになったエンジニアから Slack を使いたいという要望があった (らしい) からです。Slack 自体はしばらく個人的に使っていたので、導入自体は反対ではありませんでしたが、さすがに民族移動を行うには、それを正当化する理由を考える必要がありました。
悩む
なにもかも順調なら、なぜ移行するのか?黄金の質問ですね。Catch-22 です。
専属のマーケティング・マネージャーやダイレクト・セールスの仲間もいるので、理由もなく移行を押し付けれません。ただでさえ忙しいのに、一方的に環境をガラリと変えられるわけですから。
移行コストは人間的なものだけではなく、技術的にも生じます。各種ツールの再設定や、製品アプリケーションの通知コードに手をいれるといった手間です。これらのコストを伴ってまで移行する必要があるのか?と少し悩んでいました。
隣の芝生は本当に青いのか?
Slack を勧める人たちが口を揃えて言うのが、カスタム・インテグレーションの素晴らしさです。あらゆるサービスと簡単に連携できるんだよと。個人的にこの点には疑問を抱いています。いまどきのプロダクティビティツールだと当たり前の話ですし、なにより Slack も HipChat も立派な連携のラインアップを提供しています。
その他のメリットに関しても反論できるものばかりで、本当に困ったものです。
勢いのあるプロダクトに触れている重要性
流行っているから使いたい。もっとも説得力に欠ける論点ですね。それを言われた社内システムを保守する人間はこう考えるでしょう「勘弁してくれ、また何か流行ったら、すぐに乗り換えるのか」と。正論です。
同時に、勢いのあるプロダクトに日常的に触れることも重要です。人の心をつかむ色使い、レイアウト構成、文言スタイル、アニメーションの使い方、どんな技術を活用しているのか、運営サイドのコミュニケーションスタイルなど、吸収すべきものが山のようにあるからです。こういった話は言語化や定量化が難しく、プロダクト開発の現場にいない上司や部署には理解されづらい価値観です。非合理的ではありますが、自分はそういった価値観が好きなので、これで納得しました。
ちなみに、次に何か流行ったらまた乗り換えるのか?という疑問点ですが、ぶっちゃけ、当たり前だろw と個人的に思っています。知的好奇心には常に答えてあげないと。
実は大した話ではなかった
幸い、小さなスタートアップということもあり、誰も嫌がらずに乗り換えることが出来ました。勢い大事ですね。エンジニアリング面の移行コストも、いざ作業に入ってしまえば、大した話ではありませんでした。ワークフロー的にも、1 日で全員 Slack を使いこなしていたので、何ら問題はありませんでした。優秀なプロダクトの証拠ですね。
移行して良かったこと
実際に移行して良かったと思う点です。数は少ないです。
アイコンが可愛い: 無理やり感はありますが、普段つかっているツールに愛着を持つことは大事です。
Android アプリがよく出来ている: 自分も含めて、Android ユーザのスタッフはこれだけで喜んでいました。日本語がまともにレンダリングされる。
検索がよく出来ている: 日本語の検索クエリにも、それなりに満足な結果を返してくれます。これだけで移行の理由になるかもしれませんね。/s 検索クエリ
のスラッシュコマンドも便利です。
相手の顔が見える: HipChat から Slack に移行して、プロフィール画像の重要性を改めて痛感しました。その昔、@os0x の書いた、ウェブ版の HipChat に無理やりプロフィール画像を差し込む Chrome Extension を重宝していたことを思い出しました。
運営のやる気を感じる: 正直なところ、HipChat は Atlassian に買収されてから動きが鈍くなったと感じています。対して Slack は、創業者が従来型よりもキツい Stock プランを模索しているほど、長い目で物事を見ているようです。これだけでも安心しますね。いきなりサービス終了や、中途半端に買収される心配もなさそうです。
結果的に、日常的に何か変わったわけではありませんが、エンジニアの頭の中から一つ雑念が減ることは良いことだと思います。知的労働者がよりハッピーになることで、ゾーンに入りやすくなるのであれば、とてもハイリターンな安い投資です。
引き続き、チームがよりハッピーになれる施策を実行していければと思います。